<135年の伝統と、ミクロンの未来へ>

光と精密の融合が拓く「日本の物作り技術」

私たち株式会社渡辺護三堂は、明治23年(1890年)、大阪の地に創業した製版会社です。
その歴史は、日本の近代印刷史と軌を一にしています。創業当時は、印刷に使う「版」をすべて人の手でつくる時代。
筆で線を引き、彫刻刀で文字や図案を刻み、まさに「手仕事」で情報や意匠をかたちにしていました。
以来130年以上にわたり、当社は印刷技術の進化とともに歩んできました。
木版、鉛版、写真製版、そしてデジタル製版へ——
時代の大きな技術変革を受け入れながらも、常に一貫して守り続けてきたのは「正確に、精密に、原版をつくる」という職人の気概です。

<10000dpi × 3ミクロンの技術を標準化>

超微細・高忠実の“ものづくり前工程”技術

現在、当社では10000dpi(dot per inch)を超える高解像度データを、3μm(マイクロメートル)単位で感光性フィルムや樹脂版に高精度で描写する技術を確立しています。これは一般的なオフセット印刷用データの約10〜20倍の解像度に相当し、わずかな設計誤差や輪郭のゆがみさえも許されないハイエンド製品の製造現場に対応するためのものです。
製版とは本来、「印刷のための前工程」ですが、私たちはこの製版技術を、より広義の“構造形成技術”と捉えています。
現在当社が担っている仕事の一部には、以下のような先端分野が含まれています:

  • 機能性パッケージ向けフレキソ印刷用樹脂版製造(高い環境性能とバリア性)
  • ホログラム構造形成(セキュリティおよび意匠用途)
  • 電子材料用フォトマスクのプロト加工(タッチパネル、基板回路、RFID)
  • マイクロ流路チップやバイオデバイスの構造加工(医療・検査用途)

私たちの技術は、「見えるもの」をつくる印刷だけではなく、「見えないもの」「精密すぎて人の目では確認できない構造」を正確につくり上げる世界に踏み込んでいます。

<光を操るための装置開発とノウハウ蓄積>

“光の設計”が製版の未来を創る

当社が特に強みを持つのが「露光処理」、つまり光で描写する工程です。
フィルムや樹脂といった感光性材料の表面にレーザー光で処理する技術、それを紫外線(UV)を照射することで化学反応を起こし、データを物理的構造として定着させる工程は、製版の核といえる部分です。
当社では、UVA(365nm)波長域のハイパワーUV露光装置を独自に選定・設計・カスタマイズし、照射均一性・光量安定性・温度特性などを、厳密に管理しています。
これにより、わずか数ミクロンの幅のラインやドットが、寸分の狂いなく現像される“信頼できる製版”を実現しています。
また、この露光技術は、近年注目されるナノ・マイクロパターニング技術への応用展開も視野に入れており、将来的には半導体フォトリソ工程の前工程や、医療用機能フィルム形成といった用途にも活用されていく可能性を秘めています。

<環境印刷・脱炭素社会への貢献>

「印刷版」から広がるグリーンテクノロジー

当社の主力技術であるフレキソ製版は、水性インキ対応・脱溶剤・高速印刷に優れた特性を持ち、現在欧米ではグラビアに代わる印刷方式として急成長を遂げています。
私たちはこの「持続可能な印刷方式」を日本でも普及させるべく、国内で数少ない高精度フレキソ製版のリーディングプレイヤーとして、設備導入支援・技術サポート・機材供給の三位一体で展開しています。
また、近年はフィルムや紙素材との適合性を高めたメディアユニバーサルデザイン対応の印刷用版や、視認性・触感性に配慮した感性工学的アプローチの版材加工にも取り組んでおり、「使いやすさ」や「人に優しい情報伝達」を実現する製版を目指しています。

<大阪・関西万博で伝えたい、私たちの想い>

「製版技術が、未来をつくる。」

130年以上にわたり、私たちは「正確に写すための原版づくり」にこだわり続けてきました。
その技術は、印刷の世界を超え、医療、エレクトロニクス、環境技術など、多岐にわたる分野で活用されています。私たちの製版技術は、目には見えないミクロン単位の世界で、確かな形を生み出します。それは、未来の社会を支える基盤となるものです。
大阪・関西万博という国際的な舞台で、私たちはこの「原版づくり」の価値を世界に伝えたいと考えています。そして、次の100年に向けて、光と職人の知恵で、未来のかたちを描き続けてまいります。