【光学ホログラム技術の解説と応用展開 】
光学ホログラフィは、干渉や回折を利用して物体光の波面情報を記録・再生する技術ですが、私達が確立している技術は、従来のレーザー光による干渉縞を記録するホログラムとは異なるアプローチをとっています。当グループでは製版フィルムを用い、透過する領域と透過を遮蔽するマスクパターンの組み合わせによって、砂目模様のような微細構造を設計・描画し、LED等の点光源を通して観察した際に特定の画像が浮かび上がるという光学的効果を実現しています。
この技術の光学的原理、再生条件、構造設計、そして今後の応用展開については下記の通りです。
1.技術の特徴と構成要素
当グループの光学フィルム技術は、製版分野で培った高度な描画技術と感材処理技術をベースに、写真製版フィルムに対して高密度の透過パターンと遮光パターンを設計・形成することで、画像再生機能を実現しています。
このフィルムには、砂目調のような一見ランダムに見える微細な模様が形成されており、これは設計された画像情報に基づいて生成されています。光源としてLEDなどの点光源を選定し、一定の観察角度・距離からこのフィルムを見ることで、光がマスクパターンにより遮られたり透過したりしながら視認者の網膜上に特定の画像として構成されます。
2.光学的原理
この技術は、光波の干渉や回折による波動光学に基づいたものです。フィルム上の透明・不透明の分布が光の進行を制御し、点光源から出た光がどの方向に伝播し、どこで結像するかを制御する仕組みです。逆に言うと、所望の位置に所望の像を形成するように光波を制御するのがホログラムであり、私達は、光波の回折伝搬計算を行うことでホログラムの砂目模様を設計しています。
3.砂目模様と情報密度
砂目模様とは、フィルム全体に施された微細かつ不規則な模様のことであり、視認画像を構成するために情報密度を極めて高く保つ必要があります。この模様自体は、単純な点の集合ではなく、特定の光方向と透過性に対応するよう最適化されたピクセル群で構成されています。このため、通常の可視光領域の照明環境下では画像は見えず、あくまでも点光源という条件下でのみ視認されるという高度な選択性を持っています。
これにより、製品に高度なセキュリティ性や演出性を付与することができます。
4.再生条件と設計の工学的側面
この技術を活用した画像再生には、以下のような条件を正確にコントロールする必要があります。
・点光源の指向性と照射位置
・フィルムの描画解像度とコントラスト
・透過/遮光パターンのサイズと密度
・観察者の視線角度と距離
特に、フィルム描画には従来の製版技術を応用しており、1ミクロン単位での描写制御が可能です。
この解像力により、非常に細密な画像や文字の再生が可能であり、意匠保護やコピー防止において極めて有効です。
また、製造工程では、ポジフィルム/ネガフィルムなど写真感光材料を用いた階調処理や、画像合成ソフトウェアによる位置決め演算なども活用されており、光学・グラフィック・製版工学の融合による先端技術です。
5.応用分野と可能性
この技術は、以下のような分野において応用を期待しています。
・偽造防止を目的とした高セキュリティラベル
・ブランド価値を高めるための意匠性ホログラムパッチ
・限定商品やアート作品への動的光学効果の付加
・パッケージに組み込まれる認証用トリガー表示
・インタラクティブ展示物としての空間映像
さらに、今後はAR(拡張現実)との融合、インクジェットなどとの複合加工なども想定されており、アナログとデジタルが融合する次世代視覚情報伝達媒体として期待しています。
当グループが提供する砂目調ホログラムフィルム技術は、製版技術と光学的描画技術を融合したものです。
光の透過・遮光を制御することにより、選択的に視認可能な画像を形成するこの技術は、セキュリティ・演出・表示といった分野において、今後重要な役割を担うものと確信しています。